自らの血で猫を救った、「供血猫」ばた子の物語

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猫の病気や手術というと、かかりつけの動物病院の話や、ペット保険の話に目が向きがちではありますが、いざその場面に向き合うまで「猫の輸血」について考える機会は、なかなかないものと思われます。猫の治療に必要な血液はどのように供給されているのか、という事実の一端を知らせてくれるのが『空から見ててね いのちをすくう“供血猫”ばた子の物語』です。

私事で恐縮ですが、先月わが家の猫が体調を崩し、場合によっては手術が必要になるかも…という状況になりましたが、その際においても、恥ずかしながら「輸血どうする問題」にはまったく考えが及ばなかった次第で、こちらの本を拝見して、人間の医療環境と猫の医療環境との差を痛感したのであります。

現在、日本には動物用の血液センターはなく(人間であれば、日本赤十字社の血液センターが全国にあります)、輸血を必要とする動物医療機関では、一般の犬猫から献血を受けています。「動物 献血」で検索すると、各地の動物病院、医療センターで随時献血を募集しています。しかし、血液ドナーとしての要件があり、すべての犬猫から献血を受けることはできません。そのため、大きな動物医療機関では、「供血猫」「供血犬」を飼育しているといいます。

この本の主役、ばた子ちゃんもそんな「供血猫」でした。供血猫としての役目を担えるのは生後7年まで。その間、多くの猫たちを助けたばた子さんは同じ動物病院に勤めていた、著者のはせがわさんの元へ引き取られます。

猫は本来、果物のにおいが苦手ですが、ばた子ちゃんはなぜか大好きで、果物がとどくいつもその上に座っていました。
まるで「これは私の!」と言っているようで、なんともかわいかったです。
(P51より)

供血猫として動物病院へ来た経緯、家猫として愛情を受ける日々、そして闘病するばた子ちゃんとの記録を綴るこの一冊は、集英社みらい文庫は小学生向けの新書版文庫シリーズですが、大人にどう読んでもらいたいかと、著者のはせがわまみさんへ伺いましたところ、以下のコメントをいただきました。

大切な家族である猫が、病気や事故で輸血が必要になる時があります。
その血液は供血猫・供血犬たちが体をはって提供してくれたものであり、当たり前に受けられるものではなく、彼らの働きがあるからこそ成り立っています。
そして一般の家庭の猫ちゃんわんちゃんも献血ボランティアとして命をすくうお手伝いができることを、猫を愛するご家族や周りの方と一緒に考えながら本書を読んで頂けたら幸いです。

本書は小学生向けのため、あまり難しい内容にはできなかったため、大人の方に知っていただきたい「供血猫」について「できること」「考えてほしいこと」を巻末にまとめています。
(※献血ボランティアについては、動物病院にドナー登録条件や募集しているかどうかをご確認ください)

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気になるお値段は税抜き640円。自らの血をもって、猫を救う猫がいることに、思いを巡らせるきっかけになれば幸いです。

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『空から見ててね いのちをすくう“供血猫”ばた子の物語』/集英社みらい文庫、★★★毎日が猫パーティー★★★

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