なになに、それどこに書いてあるの。
猫のゲノム解析から、猫の品種の起源が辿りうるという研究成果が、今月2日に発表され、猫好き界隈のみならず広くニュースで報道されております。発表したのは、京都大学ウイルス研究所の宮沢孝幸准教授、京都大学大学院医学研究科博士課程の下出紗弓氏、そして、東海大学医学部の中川草助教からなる研究グループ。
日本語でまとめられた公式文書がありますので、そちらをご覧いただければすべて解決ではありますが、お急ぎの方向けに、PDFファイルに記載された詳細の内容を簡単にまとめると…
- 通常、体細胞に感染する「レトロウイルス」が、稀に生殖細胞へ感染すると、宿主のゲノムの一部となり子孫へ受け継がれる。この特性を使って、共通の祖先を知ることができる
- イエネコの血液および細胞のゲノムDNA配列を比較すると、イエネコに共通して、同じウイルスに由来する配列(RDRS C2a)が見つかる
- 他のネコ科の動物のゲノムDNA配列と比べたところ、それがなかったため、該当する配列ははベンガルヤマネコとネコ属とが分岐した620万年前以降であるとわかる
- さらに多くのイエネコを調査するとRDRS C2aとは別の染色体上に別のウイルスに由来する配列(新しいRDRS)を保有している猫がいるとわかる
- 「新しいRDRS」を保有している猫は、欧米産の品種では約半数だったのに対し、アジア産の品種では約4%と極端に差がある
- ということは、中東で家畜化された猫のうち、欧米へ広まっていった品種だけに「新しいRDRS」の元となるウイルスが感染したと考えられる
- 「新しいRDRS」を調べると、ヨーロピアンショートヘアー、アメリカンショートヘアー、アメリカンカールは、共通して「新しいRDRS」を持っている
- ということは、ヨーロピアンショートヘアーが海を渡ってアメリカ大陸へ移動し、品種改良されてアメショやアメリカンカールが生まれたという説と一致する
- すなわち、RDRSが家畜化した後の猫の移動経路指標として使える可能性がある
この手法により、もっと多くの猫のゲノム解析が進むと、品種毎の差や違いがわかるようになるかもしれない、わけですね。研究メンバーの一人である下出さんが、テレビのインタビューで語ったところによれば、
とのことで、三毛猫たちがどこから来たのかとか、史料上に見られる「猫」たちと現代の猫との接点が見つかるとか、猫の歴史をひもとくヒントに繋がる可能性を秘めていると思うと、胸熱感を押さえきれない研究成果と言えましょう。イラスト付きの情報をご覧になる場合は、さきほどのPDFファイルをご覧あれ。宮沢准教授の研究室の公式ページはこちらで、Facebookページはこちらです。
ちなみに、京大の研究成果一覧ページには、今回紹介した研究以外にも「機械学習によるカンニングの検出技術の開発」、「骨標本で外来魚を駆除」「後悔感情から高校生の自律的な動機づけの獲得プロセスに迫る」などといった、下手なWebメディアの記事タイトルより興味をそそるタイトルが散見されますので、興味とお時間のある方はこちらもどうぞ。
[感染性レトロウイルスの度重なるネコゲノムへの侵略 -ネコの移動の歴史を探る手がかりとなるレトロウイルス感染の痕跡の発見-/京都大学、Photo by kanel ]
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