「2020年を1つの期限に良い例を示したい」。小池都知事「殺処分ゼロ」を語る

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2016年8月26日と27日、一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの主催により、アニマル・ウェルフェア(「動物たちが自然に行動できるように、快適な環境を整えること」)の発信を目指す「ANIMAL WELFARE SUMMIT 2016」が、東京大学本郷キャンパス内で開催されました。

2日間にわたった、殺処分ゼロを目指す取り組みに関するディスカッションや講座の1つに、26日開催の特別プログラムとして、「東京殺処分ゼロを目指して」と題された、小池百合子東京都知事とクリステル・ヴィ・アンサンブル代表理事を務める滝川クリステル氏との対談も行われました。猫ジャーナルとして、また一都民として、猫と暮らす者として、都知事選でも殺処分ゼロを掲げた都知事の話は興味を覚えまして、取材をして参りました。そのトークセッションの模様は以下からどうぞ。

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滝川:オリンピックではお疲れさまでした。雨の中、拝見しておりましたが、大丈夫ですか? お着物で。

小池:大丈夫でした。皆さんは、着物が濡れて大変だったですねと言って、私は風邪をひいたんですけれども、そちらは気遣っていただけずに、着物のことばっかり言われて。

滝川:(周りは)そちらのほうが気になるということだったんですね。

小池:おもてなし」から始まっているわけですよね。

滝川:感慨深い思いで見ておりました。その興奮冷めやらないなか、「2020」は本当にポイントでして、私たちの財団が2020年までに、アニマル・ウェルフェアに則った殺処分ゼロを目指しています。都知事は、(都知事選での)公約のなかに殺処分ゼロを掲げていました。都知事では初めて言及されたことだと思います。

小池:ペットのことについて思いを馳せて、都知事選に立候補したのはたぶん初めてかと思います。といいますのも、私は環境大臣を務め、そしてその後も山ほどある自民党の議員連盟のなかの、動物愛護の議員連盟の会長を務めており、例の7週にするのか、8週にするのか(参考:「子犬の将来を分ける『生後8週齢』規制に大きな動き」)、ブリーダーはどうだとか、夜のペットの販売について時間帯はどうするかというようなことを、行政と業界関係者の方々、獣医さん、そしていろんな議員、とても熱心な議員もおられて、ICチップ(マイクロチップ)を入れなきゃだめという(様々な)意見を取りまとめるのを何年もやっていました。ですから、ペットの殺処分というのが、日本ではひどい状況で行われているのは、よく存じていました。

ペットの存在は社会の中でも、とても大きなものです。殺人となると大変なことですが、それがペットになると「ああ、そう」みたいな話になっている現状には大変不満を抱いておりましたので、ここは都知事選にふさわしいかどうかは別としても、私はぜひこの一文はいれたいと思って、盛り込んだわけです。

滝川:思いを持って、今日のイベントに参加した皆さんは、お言葉に本当にうれしく思って拍手をされたかと思います。いまおっしゃったように、法律がまずそこまで規制が進んでいないのが、日本の現状です。そういう部分に関してはいかがでしょうか。

小池:例えば、都知事としてはいろいろな条例という形が取れると思います。それだけに、これまでも纏め役で、いろんな議員から業界の意見をまとめるのが、ある種、会長としての役割でしたが、これから都知事として何ができるのか、そして、ゼロを目指すためには何が必要になるか、ゼロを目指すがために、かえって別の問題が起こるのではないか。いろいろな自治体のいい例もあるし、課題もある。そういったところをしっかり、見ていきたいと思っています。最新の東京の実情を申しあげますと、平成27年は全体で、816頭。そのなかで、いわゆる安楽死は304頭、出生後でそのあと生きられないような状況になっているペットが342頭、それから老齢で引き取り手がないケースが164頭。それを考えると東京都での実質の殺処分数対象は、最新で203頭という数字になります(参考:平成26年度の数値はこちら)。
※編集註:数値は口頭発表ママ。合計数が合致しないのは、複数の項目に該当するペットがあるためと思われます。

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小池:他のところも、大変頑張っている地域も多いですが、東京の大きさを考えると203というのは、ゼロを目指すにはだいぶいいところまでには来ているのではないかな、とは思います。一方でやはりまだまだペットを飼う方の意識というのが(問題もある)。日本は「少子多犬化」と言われている時代です。犬猫の数のほうが、新しく生まれる子どもの数よりも多い状況があります。さらに高齢化も進んでいる。高齢者の皆さんはペットをかわいがるのが癒やしになりますが、高齢の方々がそのあと面倒を見られなくなってしまうという事情もあります。ですから、ものごとをゼロにするのはそう簡単ではないけれども、これからの日本の社会のあり方を考えるうえに、ペットと共生する日本社会を作ることは、2020年のオリンピック・パラリンピックという1つの期限を設定した上で、東京都で良い例を示したいと思います。

滝川:殺処分ゼロを目指すなかで、特にどういったことを具体的に考えていますか?

小池:税金を投入することでいくつかの方法はありますが、やはり人間教育からはじめるのが一番早いのではないかと思います。(ペットを)愛しむ気持ちを、もっともっと人間が子どものころから、ちゃんと育てていくほうに力を入れていくべきです。私が一番衝撃だったのは、2002年に、ドイツが憲法にあたる基本法を、動物にも権利があると、改正しちゃうんですよ(参考:NPO法人 地球生物会議 ALIVE「ドイツ連邦議会、動物の権利に投票」、国立国会図書館『外国の立法』214「ドイツ連邦共和国基本法の改正 動物保護に関する規定の導入」)。日本では憲法改正すなわち何か、違ったふうに捉えられるけれども、EUの中でもドイツが最初になると思いますが、それを引っぱっているという、そういう社会・国があることに、大変衝撃を受けました。

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滝川:諸外国、先進国のなかでヨーロッパは特に進んでいると思います。東京としても先進国と思われている中で、やはりこの部分ですごく遅れていることは否めないわけで。諸外国をある意味追いかけるというか、倣うだけのことではあるとは思うんですよね。(すでに)彼らのやり方というのもありますから。

小池:NPOの方々や各自治体(市区町村など)にも税金で都のほうがバックアップしていく。ただこれは殺処分のためではなく、引き取り手を探すのために使われてこそ、税金が生きてくるものです。

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滝川:いまおっしゃったように、処分するためにみなさんの多額な税金が投入されているわけです。それは誰もが望んでいることではないはずなんです。知らぬ間にそういう使い途になってしまっている。皆さん、救う方にお金を使いたいはずです。

小池:日本は、あまりに小さなワンちゃん猫ちゃん、寵愛がすぎますよね。その意味で、8週が1つのモデルプランになるわけです。ちゃんと正しく(生後8週は親と)育てられたペットをかわいがっていくルール作りをし、そのあとどうやって(人間が)虐待をしないようにする。場合によってはそれぞれの不妊の手術などにも(税金を)生かしていきたい。それから、譲渡の正しい情報というか、各地でいい例もあると思います。

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小池:私は阪神大震災のときに(被災して)、仮設どころか避難所にはワンちゃん猫ちゃんを連れて行けない(状況だった)。今回の熊本でも、ペットのためにずっと車の中で一緒にいて、エコノミークラス症候群になって大変だったという例もありました。阪神大震災のときに、ある公園に預かれない犬猫の集まりの場があって、そこをちょっとお手伝いしました。ポコちゃんと名付けたんですが、白内障の雑種の、どう見ても目が真っ白で引き取り手がないだろうなと思って(引き取った)。あとリリーと名付けたビーグル犬。ポコちゃんのほうは、その後数年して老齢で亡くなり、リリーはちょうど選挙が重なってみんなで忙しくなったときに逃げて見つからなくなってしまったんです。(滝川さんのところも)被災犬ですよね?

滝川:福島の浪江町にいた子を引き取りました。都知事も、2匹そちらに。共通点ですね。選挙活動中にいなくなってしまって…。

小池:選挙活動に忙しくなっているうちに家出しまして。だけど、そこでポスターを貼ろうと思っても、選挙期間中は住所を書いたりすると選挙違反になるんです。いろいろ考えなくちゃいけなくて。

滝川:小池都知事自身も引き取ることに対して、関心が高くていらっしゃる。これが、2020年に向けて、これから先進国へ、本当の意味でアニマル・ウェルフェアを、女性もお年寄りのかたも含め、改めて共生できる東京を描くとしたら、どんな東京を描いていらっしゃいますか?

小池:心にゆとりを持つ(こと)。そして、長時間労働はこれまで高度成長期を支えてきたもので、日本人の勤労精神は素晴らしいと思います。しかしながらあまりにも、みんな働く。長時間働けばいい仕事ができるわけではない。「ワークライフバランス」を、私はそれをひっくり返して、「ライフワークバランス」だと思っています。まず人生、生活があって、それからワークがあるべきだと思っていて、都庁でも長時間残業しているところは罰則にするか、残業を減らしたところはご褒美にするか、ちょっと考えているところです。そうすると心の余裕が、つまり自己研鑽もできますし、ペットと共に過ごす時間が増えてきます。(そこから)生き方そのものを考えてみたらどうかなと。それを、都庁で最初にやってみようと思っています。

滝川:ゆとりを持って、動物を含めて向き合えるような余裕を各々持てるような。

小池:最後に、母を3年前に亡くしたのですが、末期ガンでしたので、病院では治しようがないわけで、緩和ケアでした。病院にいった母が、「家に帰りたい、犬がいるから」と(言うのです)。うちのワンちゃん「総(そう)ちゃん」というんですけど。

滝川:本当にそうですよね。セラピーというか。いかに、どれだけお互いに依存しているかということですよね。

小池:ワンちゃんについていうと、あと1時間でも2時間でも話せますね。

滝川:そうなんですね、私たち実は、(夜)9時からの生放送ご一緒させていただくんです。オリンピックの番組でご一緒させていただきますので(笑)。いろいろとお忙しい中で、この皆さんのこういう思いをちゃんと汲んでいただきました。そして、ぜひ東京殺処分ゼロをまず達成するために、何かしらお手伝いできればと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。

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約15分のトークセッションの会場は、時おり拍手の音に包まれる、熱気にあふれた時間となりました。殺処分および動物の虐待などの問題の原因は、動物側ではなく人間の側にあるものと考えるものとして、ペットを愛しむ教育に力を入れるという方策は首肯するところであります。猫および犬のための行動が、人間のためになることを願いながら、2020年までに「良い例」が示されるよう、猫ジャーナルとしても応援したいと考えます。

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