お目々パッチリ、見返り美人。
現在、上野の東京国立美術館で開催中の「特別展『鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─』」で展示されている、国宝の「鳥獣人物戯画巻」。もっとも有名な画面は、甲巻の兎と蛙の相撲や川遊びかと思われますが、それ以外にも数多くの動物が描かれています。『国史大辞典』の解説に見える、甲巻と乙巻に描かれた動物は下記の通り。
兎と蛙の角力、猿と兎の囲碁や競技、猿僧正の法会と供養、蛙の横死、田楽踊りなど、擬人化された動物たちの遊戯や行動が活写される。
(中略)
猿と兎の競馬や水泳、兎と蛙の競射などを描き出す。
(中略)
次に乙巻は馬・牛・鷹・犬・鶏・鷲など身辺に実在する鳥獣と、豹・虎・獅子・象など異国の珍獣、さらに麒麟・竜など空想の動物まで、それぞれの生態を写し連ねたもので物語性は持たず、むしろ絵手本的な性格が強い。
と、当時の人間社会の、身近にいた動物が垣間見えるわけですが、猫もちゃんといるのです。その場所は「甲巻」の後半部。猿の追いはぎに遭って横死した蛙を見守る群衆の一人に、烏帽子を被り、二本足で歩く猫がいます。該当箇所の全体図はWikiMedia Commons、または特別展『鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─』の公式サイト内にある、web絵巻からじっくりとご覧あれ。web絵巻のほうは、「◀」を8回クリックすると中央に烏帽子猫が登場します。
長いシッポのシマシマ模様。烏帽子を被っているところから察するに、オス猫でしょうか。手には扇も持っていますね。猫ってだけでもカワイイのですが、周囲に描かれた他の動物と一味違う点があるのです。それは「目」。兎や鼠の目は大きな黒丸で、蛙や猿の目は小さな点で、狐の細長い目は線で表現されています。それを見た後で、烏帽子猫をよく見ると、目がパッチリと他の動物と比べて大きく描かれているのがわかります。Google画像検索で、それぞれの動物の目を見比べてみますと(兎、鼠、蛙、猿、狐、猫)、いずれもその特徴をしっかり捉えた描写だとハッキリします。
烏帽子猫の描かれた甲巻の後半が「特別展『鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─』」で展示されるのは、後期の5月19日〜。GWが明けたら、国立博物館で12世紀後半に描かれたとされる、烏帽子猫を探しに行ってみたいと思います。
[鳥獣人物戯画・甲巻:サルとウサギの水遊びの場面/WikiMedia Commons]
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