猫と一緒に、猫のために、猫と同じオフィスで。多様性の時代、さまざまなスタイルで「猫とはたらく」人々からお話を伺う、猫時代のダイバーシティーワーキングインタビューシリーズの第4弾であります。今回のインタビュアーは北海道産の豆を使ったおいしさ満点の「甘ニャッ豆」の販売元、「くわぞの商店」を運営されている、原さんご夫妻です。お2人は保護猫出身のポコとこゆきの、2匹の猫と暮らしていらっしゃいます。
おいしいうえに猫の保護活動を応援できるということから、私、猫ジャーナルをはじめ猫界隈にもファンが多い「食べるほど猫が助かる甘ニャッ豆」という逸品が誕生した背景などを伺いました。
くわぞの商店(原茂伸さん・原由起さんご夫妻)
食べるほど猫が助かる甘ニャッ豆のフレーズでおなじみ、北海道産の甘納豆をEC販売する「くわぞの商店」を運営。商品パッケージにもなっている、猫のポコ(写真右)とこゆき(写真左)とともに、小樽の保護猫団体への寄付を続けている。
猫助けしたい×老舗製菓所を助けたい。2つの思いが重なり「甘ニャッ豆」が誕生
原さんご夫妻がBASEに「くわぞの商店」を開設されたのは、コロナ禍直前の2020年のこと。甘ニャッ豆というネーミングのアイデアは、由起さんの発案でした。誕生の経緯となったのは、保護猫を助けたいという思い、そして幼なじみの実家が営む小さな製菓工場を助けたいという、2つの思いだったといいます。
由起さん:夫は猫好きで、私は高校生の頃に犬を飼っていたこともあって犬が好きだったので、結婚のときに「猫と犬を1匹ずつ飼おうか」と話をしていたんです。それで、小樽に住む保護猫活動をしている親友の紹介で、猫を保護されている方のお宅に見学に行きました。
実は、当時の私はどちらかというと猫が嫌いで。その日も見るだけのつもりだったのですが、夫のほうはポコに出会うや、その場で連れて帰る支度を始めてしまったんです(笑)。住まいはペット飼育可の物件でしたが、急遽、猫トレイやごはん皿を用意して、ポコとの暮らしが慌ただしく始まりました。
茂伸さん:ポコは当時、生後4か月くらいでした。あの頃は暴れん坊でしたね…。ちょっとからかうと、私の首根っこに噛みついてくるようなタイプでした。人慣れしておらず、噛むわ引っかくわで、血だらけになりながらの生活でしたが、今ではすっかり温厚になりました。
由起さん:小樽には昔から野良猫が多いイメージがありました。ポコと暮らすようになってから、寒さの厳しい小樽の街で暮らす保護猫や野良猫たちを1匹でも多く幸せにしてあげたいという恩返しの気持ちから、猫のためにできることはないかと考えるようになりました。
茂伸さん:また同時に、妻の同級生の親御さんが営んでいる老舗の甘納豆工場「近藤製菓所」の売り上げを伸ばしたいという思いも、妻は長年持っていました。その2つの思いを同時に解決する方法として「甘納豆を買うと、猫の保護活動に寄付できる『甘ニャッ豆』」というアイデアを妻が考えたのが、くわぞの商店創設のきっかけです。
パッケージに描かれたのと同じ、ハチワレ猫が2人の元へ。由起さんの夢がかなう
一念発起で始まった「くわぞの商店」でしたが、ご夫婦ともにECサイト運営は初めて。試行錯誤しながら「甘ニャッ豆」の販売が始まりました。その後のこゆきちゃんとの出会いも「甘ニャッ豆」がきっかけとなったといいます。
由起さん:私はカメラマン、夫は行政書士が本職で、「甘ニャッ豆」のアイデアができたときには、それまで商品販売なんて手がけたことがありませんでした。パッケージデザインから通販サイト作り、商品価格、それに寄付額の設定まで、すべてゼロからのスタートで大変でした。
茂伸さん:私は事務仕事が得意なので、パッケージデザインなどは妻に任せて発送作業やお金の管理などを担当しています。妻がアイデアを出すのが得意なのは知っていましたが、甘ニャッ豆のイラストやパッケージができあがったのを見たとき、ここまでしっかりとしたものができあがるとはと、手前味噌ながら、正直驚きました。
由起さん:ポコのイラストを金時豆の「甘ニャッ豆」のパッケージにして販売をスタートした後、2匹目に黒白ハチワレの女の子を迎えたいと思い、その話をポコを紹介してくれた友人に伝えたんですね。その直後、「余市町で妊娠中に保護された猫が黒白ハチワレの女の子を産んだよ」と連絡を受けたんです。早速、我が家で引き取ることを決め、名前は「こゆき」にしました。その「こゆき」のイラストをパッケージにしたのが、くわぞの商店2つ目の商品となる白花豆の甘ニャッ豆「しろはニャッ豆」です。
高校生だったときに、ペットだった犬が飼ってから2年くらいで亡くなって以来、ポコを迎えるまでペットと暮らすことはありませんでした。その間の夢は「ペットと一緒に眠ること」でした。ポコとこゆきを迎えてから、私が夜、布団に入るとこゆきが一緒に入ってきてくれて、朝目を覚ますとポコも横にいてくれるようになりました。私の夢を、ポコとこゆきがかなえてくれたんです。
茂伸さん:2匹を迎えてから1度引っ越しをしたときに、性格の違いが現れましたね。ポコはまったく新居でも動じない図太い性格だったのに対して、こゆきはソファの下から引っ越してから3日くらい出てこないタイプ。性格は違いますがとても仲が良く、お互いに安心して暮らしています。
子どもの頃から慣れ親しんだ味が、デパートの高級品よりも甘くておいしいと気づく
幼なじみのご実家だという「近藤製菓所」の豆菓子は、由起さんにとって慣れ親しんだ味。しかしそれが、高級品としてデパートで販売されている甘納豆よりもおいしい逸品だったと気づいたのは、大人になってからだったそうです。
由起さん:小樽市の「近藤製菓所」は、子ども時代からよく一緒に遊んでいた幼なじみの実家です。友達の家に遊びに行くと、必ず自宅の工場で作った豆菓子が置いてありました。幼なじみにとっては毎日見るもので飽き飽きしてるから、私に持たせてくれるんです。家に持って帰ると、おいしいお菓子だからいつも親はよろこんでいました。
茂伸さん:その味が、当たり前というか、ふつうだと思っていたんだよね。
由起さん:大人になってから、デパートで高級品として販売されている甘納豆を食べて初めて、味が全然違うことに気づきました。近藤製菓所の甘納豆のほうが、やっぱりおいしいんです。
すべてのお菓子を袋に詰めるところまで手作業で作っているから、作れる数に限りもあるし、スーパーなどに卸すとどうしても買いたたかれてしまうため、販路も限られてしまいます。パッケージの見せ方や売り方次第で、もっと適正な価格で多く売れるのではないかと長年思い続けていました。それが、保護猫への支援と結び付いて「甘ニャッ豆」は誕生しました。
多くのリピーターに支持される、人気商品に
猫ジャーナルが「甘ニャッ豆」を知ったのは、開店間もない2022年2月のことでした。猫が助かる甘味と知り、記事に取り上げさせてもらおうと、すぐさま連絡をしたのであります。
由起さん:BASEでECサイトを立ち上げて、身内や知り合いに知らせるところから始めました。知り合いの動物病院の先生がFacebookでシェアしてくれたのをきっかけに、開店から1週間くらいしてから、猫ジャーナルさんから連絡をもらいました。令和2年2月22日の、猫の日の直前でしたね。
茂伸さん:それをきっかけに注文が殺到して大慌てになりました(笑)。その後、猫ジャーナルさんとコラボした寄付金増量パックを作らせてもらったり、カラパイヤさんで紹介してもらうきっかけにもなりました。
由起さん:新規のお客さまがドッと増えたのですが、1度購入いただくと、2回・3回と継続して注文いただくことも多く、今はリピーターの方々のご注文で成り立っています。10回以上購入されている方もいらっしゃって、感謝しています。また、この味をより多くの方に知っていただきたいと思っています。
由起さん:他にも、コラボ商品としてコーヒー豆と甘ニャッ豆のセットがあります(予約販売受付中)。Instagram経由で、余市町にある自家焙煎コーヒーのカフェ「cafe GATTINA」さんからご連絡をいただいたのがきっかけです。「GATTINA」はイタリア語で子猫という意味で、カフェで猫グッズを販売したり、くわぞの商店と同じように商品売り上げの一部を保護猫活動へ寄付されたりと、猫にまつわる活動をされていました。カフェで「甘ニャッ豆」を置かせてほしいというご依頼でしたので快諾させてもらい、くわぞの商店でもcafe GATTINAさんで焙煎した豆と甘ニャッ豆のセットを販売しています。
猫ジャーナルでも個人的に購入させてもらったのが、秋限定の「かぼちゃグラッセ」。かぼちゃの甘みと砂糖の甘みが絶妙にマッチして、開けたが最後You Can’t Stop必至の逸品です。お2人には、くわぞの商店販売中アイテムの人気ランキングを伺いました。
茂伸さん:先日cafe GATTINAさんでの猫イベントで対面販売したときの売れ行きでは、1番人気が「おたるしあわせの甘ニャッ豆 5色」でした。5種類のバラエティパックで初めて購入される方へのお試しにもなりますし、大容量でおトクなのもポイントだったと思います。
2番人気は「しおあずき甘ニャッ豆」。北海道岩内町の海洋深層水塩「星の塩」を使った、塩味の甘納豆。恐らく、他にはないテイストです。
3番人気が定番の金時豆を使った「おたるしあわせの甘ニャッ豆」。お正月の煮豆の代わりに購入される方が多かったです。
製菓所の支援と保護猫活動の支援を、細く長く続けたい
茂伸さん:商品を増やすことはずっと私たちも考えていました。近藤製菓所が手いっぱいなので。猫ジャーナルやcafe GATTINAさんとのコラボセットは、手いっぱいの近藤製菓所に負担を掛けずに商品を増やせるアイデアだったので助かりました。
由起さん:cafe GATTINAさんでは、くわぞの商店の甘ニャッ豆を材料にした猫型のパウンドケーキや甘納豆入りコッペパン「ねこっぺぱん」をすでに作っていただいています。洋菓子と甘ニャッ豆とのコラボセットを作ろうと相談しているところです。
子どもの頃から、近藤製菓所でおばあちゃんやお母さんが豆を広げて、弾いて選り分けて、浸して、煮込んで、乾かしてと何段もの工程を経て丹念に作っているのを見てきました。あわてて作ると乾燥がうまくいかず、湿ってしまうそうで、味や品質を維持しながら作り続けるのは本当に大変だと思います。今はおばあちゃん1人とお手伝いさん1人のたった2人で作っている状況で、くわぞの商店から発注依頼をかけても「そんな数は作れない」と断られてしまうこともあって、在庫が切れてもすぐ入荷できないときもあります。近藤製菓所への負担をあまり掛けないようにしながら、これからも細く長く「甘ニャッ豆」の販売を続けていけたらと思っています。
「一回召し上がっていただいて『おいしいな』と思ってもらえたら、半年後とか1年後とかでいいので、たまに思い出してくれるお菓子でありたい」と語る、原さんご夫妻。「甘ニャッ豆」を店頭で購入できるのは、長万部と小樽のお土産屋さんの2箇所とcafe GATTINAのみ。店頭で購入しても、BASEショップで購入しても、保護猫団体への寄付につながりますが「BASEで購入いただくと、1商品につき100円が寄付されます。卸先を経由するとどうしても寄付金が少なくなってしまう」とのことでしたので、保護猫活動を応援したいという方には、BASEのくわぞの商店での購入がお勧めであります。
ちなみに、猫ジャーナルとコラボ「猫ジャーナル×甘ニャッ豆 〜募金なまら増額セット〜」では、発売した2021年度において2万4200円の寄付が実現いたしました。
コラボセットにも使用されている「猫ジャーナルしおり」は在庫はまだまだ抱えておりますので、これからも猫ジャーナルといたしましては、引き続き募金増量セットのコラボの販売および、新たな猫助け企画で協力させていただきたいと考えております。
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